有効需要の原理 (読み)ゆうこうじゅようのげんり(英語表記)principle of effective demand
日本大百科全書(ニッポニカ)「有効需要の原理」の解説
有効需要の原理
ゆうこうじゅようのげんり
principle of effective demand
有効需要とは、商品への単なる欲望ではなく、貨幣的支出に裏づけられた需要をさし、有効需要の原理は、経済活動の水準(国民所得や雇用の水準)を決めるものは、こうした有効需要の大きさによる、という理論である。J・M・ケインズが 『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936)において提唱した原理である。
ケインズ以前の古典派経済学の考え方は、「セーの法則」 に要約されている。すなわち、この法則によると、経済活動の水準を決定するのは、需要ではなく、供給である。マーケット・メカニズムに任せておけば、供給はつねにそれに等しいだけの需要をつくりだし、完全雇用もまた自動的に達成されると主張された。
しかし、このような古典派の考え方は、1929年10月24日の ニューヨーク株式市場の大暴落 をきっかけとして起きた世界大恐慌を前にして無力であった。不況が深刻化するにつれ、雇用は大幅に減少し、アメリカでは4人のうち一人は失業という最悪の状態となった。もはや、マーケット・メカニズムに任せておけば失業はなくなるという事態ではなく、新しい処方箋(せん)が求められていた。
これに対してケインズは、生産物市場や労働市場においては、価格や賃金が不均衡を是正するように伸縮的には変化せず、それらは粘着的であると考えた。需要が供給を十分に満たす水準に達しておらず、そのために大量の失業が発生している。需要不足により生ずる失業を解消するには、需要そのものを拡大しなければならない。需要が増えるにつれて、企業の操業度は高まり、企業経営も好転し、雇用もまた高まり、失業は減少する、と主張したのである。ケインズの立場にたてば、民間の需要(民間の消費支出や投資支出)が不足しているのであれば、その不足分を政府が補ってやればよい。政府による総需要管理が重要となる。その政策としては、(1)公共事業の拡大などの政府支出の増加や減税の実施という拡張的財政政策、(2)マネーサプライを増やし金融を緩和させ、利子率を低下させ、企業の資金コストを低減させ投資意欲をかき立てるといった拡張的金融政策が考えられる。
需要が制約要因である経済では、需要重視の経済政策は有効である。しかし、1970年代の石油ショックを契機に、供給が制約要因となってきており、供給面を重視する経済学(供給の経済学=サプライ・サイド経済学)が登場してきている。
[内島敏之]
『J・M・ケインズ著、塩野谷祐一訳『ケインズ全集7 雇用・利子および貨幣の一般理論』(1983・東洋経済新報社)』▽『宇沢弘文著『ケインズ「一般理論」を読む』(1984・岩波書店)』▽『土志田征一著『レーガノミックス――供給経済学の実験』(中公新書)』
https://kotobank.jp/word/%E6%9C%89%E5%8A%B9%E9%9C%80%E8%A6%81%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86-144718
世界大百科事典内の有効需要の原理の言及
【ケインズ学派】より
…経済全体の集計量(たとえばパンに対する需要といった個々の財に対する需要ではなく,総消費量といったように)を問題にするという意味で,ケインズ経済学は今日マクロ(巨視的)経済学とよばれる。
[有効需要の原理]
総需要,総消費等マクロ的集計量に注意を集中したケインズの総生産(所得)決定理論は,単純明快なものである。すなわち,一国の総生産(所得)水準は総需要の水準によって決定されるというのである。…
日本国民に、10万円配れば。
是の多くは、日本国内の消費にまわる。
ならば、極々大局から観れば。 (マクロ(巨視的)経済学の視点)
その消費の分を、日本国内産業が、生産する ことと成る。
つまり、支那のために、無駄な生産をする力が、その 10万円分は、減ることと成る。 (マクロ(巨視的)経済学の視点)
ケインズの国民経済学を、知っていれば。たやすく理解出来ること。だが、湯田屋の目先の経済学では、こうした俯瞰した視点は、もてない。
支那から、10万円を貰う。 - 我が郷は足日木の垂水のほとり (goo.ne.jp)
↑ マクロ(巨視的)経済学から見て、具体的なイメージで、類挙すれば。この様な、例えと成る。
…経済全体の集計量(たとえばパンに対する需要といった個々の財に対する需要ではなく,総消費量といったように)を問題にするという意味で,ケインズ経済学は今日マクロ(巨視的)経済学とよばれる。
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